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アメリカ在住大学生が映画について熱く語っているブログ

映画「シェイプオブウォーター」 感想:怪獣と難聴の熟女の恋愛映画はなぜアカデミー作品賞に輝いたのか?

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©2017 Fox Searchlight

こんちくわ!Shygonです!

今回は第90回アカデミー賞で最多13部門にノミネートされた映画

「シェイプ・オブ・ウォーター」 

を熱く語ります!

2017年に製作された本作は冷戦期のアメリカを舞台に政府の秘密研究所に捕らえられた半魚人とそこで働くひとりの女性との純粋な恋物語です。はじめ聞いたとき、半魚人と女性とのラブストーリーの恋愛映画なんて変な映画としか思っていませんでした。ところが、ベネチア映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を取り、ほかの映画祭の主要タイトルとみるみる取っていきました。そして、アカデミー賞では最多の13部門が候補となり、作品賞を含む4部門を受賞しました。

いざ映画館に足を運んでみると

なんて美しい映画なんだろう、、、

ぽつりと言葉が出てしまうくらい非常に綺麗で心が洗浄された気分になります。怪獣と人間という不気味なカップルをこれほどにも鮮明に映し出し、心が浄化されるような体験をするのははじめてです。そしてこんなに様々な仕掛けが全編通じて張り巡らされている映画はまさに映画オタクのギレルモ・デル・トロ監督らしいといえるでしょう。では一体どんな体験を本作「シェイプ・オブ。ウォーター」でしたのでしょうか?熱く語りたいと思います。

本作の様々なトリックの種明かしは最後の章でばっちり語っていきたいと思います。

 

あらすじ

1960年代アメリカ東部。

ソ連との冷戦にシビレを切らす両国は研究に研究を重ね、

他国を圧倒しようと必死であった。ある日、政府の秘密に基地にアマゾン近郊で捕獲したという半魚人が研究所に運ばれてきた。そこで夜勤として働く発音生涯のイライザは徐々にその半魚人に惹かれていくが・・・

ソ連のスパイ、清掃員の恋、それに加担する売れない画家など様々な人たちの思惑が錯綜する中、女性と半魚人の禁断の恋物語がいま幕を開ける。

 

怪獣と熟女の純粋な恋物語

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©2017 Fox Searchlight

2017年に製作された本作はベネチア映画祭で公開されると最高賞にあたる金獅子賞に輝き、各映画賞でも主要部門を独占した話題作です。脚本と監督を務めたのはギレルモ・デル・トロで、彼は「パシフィック・リム」や「パンズ・リビランス」などで有名です。

彼の特徴として幻想的なおかしな空間を毎回徹底して作り上げます。今作も3年半かけ綿密に作り上げ半魚人には江戸時代の絵をモチーフにしたそうです。キャストはサリー・ホーキンスが発音に障害のある清掃員を、リチャード・ジェンキンスがゲイの売れない老人画家に扮しました。黒人同僚のゼルダをオクタヴィア・スペンサーが演じました。

サリー・ホーキンスは全編通じてほとんど話さず、手話での会話は圧倒的な存在感を魅せる傍ら、妄想の中でのミュージカルシーンや目つきで訴える彼女の演技はまさに天才しかなしえない技です。そして、半魚人はモーションキャプチャーなどは使わず、実際にダグ・ジョーンズが演じました。半魚人という人間離れしたキャラクターを彼は見事に演じ切り、観客は現実世界との区別を難しくさせるほど驚きの連続でした。

 

立場の弱い全ての人間に送る応援映画

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©2017 Fox Searchlight

はじめにキャラクターの共通点を見ていきましょう。主要なキャラとして、主人公のイライザ黒人同僚のゼルダゲイの老人画家ジャイルズ、そして半魚人です。イライザは幼い頃のケガから話すことができず、手話で会話をしています。ゲイの老人は画家をしていながら、絵は全く売れず、、そして黒人女性のゼルダ。

彼ら3人に共通することは誰も社会的に認められず、なにかを主張しようとすることすら許されない「声を持てない」人たちなのです。1960年代という時代は、ゲイであることは認められず、黒人でかつ女性というのも、障がいであるのも、他の一般的なひとたちと同じ立場で物事を発することができないのです。

そんな社会的な立場の低い彼らが気取っている白人に「反逆する映画」なのです。そしてこの状況というのは数十年経った今でさえ変わっておらず、そんな世界情勢に終止符を打とうという本作の覚悟が見受けられるのです。さらに半魚人と女性の恋愛物語は全世界の人たちへのエールを送っているのです。

 

「半魚人と人間の恋愛物語」を聞くとなにを思い出すでしょうか。「人魚姫」、そして「美女と野獣」が挙げられるでしょうが、これらの物語は最後には扇様に戻ったり、両者が美男美女であるのが必須条件であることをもとに物語が成り立っているのです。そんな物語を見てきた僕らは勝手に心のどこかで固定概念を植え付けていたのです。

人間と半魚人は美男美女じゃないとだめ!

と。しかし、そんなのは一種のプロパガンダであり、監督はそんなステレオタイプを打ち砕きたかったのです。いままで、誰が「醜い半魚人と40代の発音障がいを持った女性の恋愛物語」を観ようと思ったのでしょうか。この映画は紛れもなく新しい映画であり、未来に確実に残っていく映画であることは間違いないでしょう。

 

本作が想い描く「愛の形」とは!?

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©2017 Fox Searchlight

ではタイトルの「シェイプオブウォーター(水の形)」にはどんな意味が込められているのでしょうか。インタビューの中で監督がこのように語っていました。水はどこでも通り抜け、どんなものにも形が変化します。つまり水は最も柔軟で強力なのです。そして、それは「愛」でもあるのです。年代、宗教、性別、人種など愛する相手によって愛は形を変えます。題名の「Shape of Water」はそんな水の性質から愛の形へのオマージュなのです。

そんなタイトルに込められている本作の訴えは外見の違いや、偏見に捕らわれ、ひとつの枠組みの中でといういまの形の社会的構造からの脱却を試みようとしているのです水のように愛は柔軟に強力なもの、そしてそれは愛の形でもあるのです。 最後にこんな言葉でこの章を閉めたいと思います。この言葉は僕がこの映画で一番好きな言葉です。

Unable to perceive the shape of you, I find you all around me.

Your presence fills my eyes with your love,

it humbles my heart, for you are everywhere.

愛は感じることができる たとえそばにいなくても

とてもこの詞的な美しい言葉を日本語にするのは難しいですが

こんなに素晴らしく、ポエムのような言葉で本編は幕を閉じるのです。

 

謎の多い本作のトリックを大解剖!?

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©2017 Fox Searchlight

この章ではいくつかのカテゴリーに分け、本作のトリックを紐解いていこうと思います。はじめに音楽の存在です。映画業界でも3つの指に入るアレクサンドラ・デスプラが担当しています。彼は今まで「英国王のスピーチ」、「アルゴ」、「ハリー・ポッター」をはじめ有名作品を手掛けている他、「グランド・ブタペスト・ホテル」では映画人の最高の栄誉、アカデミー賞もとっています。そして本作でも見事2度目の作曲賞に輝きました。

作品によってかなり雰囲気が変わっていきますそして本作では過去作品を上回る最高な音楽が出来上がっていると個人的には思います。「半魚人と発音障がいの女性の恋愛物語」となると現実離れしているため、観客を自然と別世界へ誘い、本作の世界観と現実世界の別離が不可欠になります。「ハリーポッター」のような魔法の世界を観客に提示することが必要なのです。

彼の音楽は果てしなく続く深海をさまよう人魚を追いかけているような感覚を気付かぬうちに脳裏で体験している、そんな感覚を覚えます。しかし同時に舞台がアメリカのそう遠くない過去の話なため、現実感もしっかり保てているのです。言葉では難しいですが、音楽が本作の雰囲気の枠組みを決めているといっても過言ではないでしょう。そして、主人公のイライザは声を発することができないのに夢の中でミュージカル映画の主演を演じており、現実でもミュージカル映画を見ながらダンスをマネするなど、未知の世界にキャラクターまでもがどっぷり浸かっている状況なのです。

 

これからはネタバレが入ります。主人公イライザについての謎解きをします。彼女についての情報をまとめると小さい頃の事故で声を発せず、そのキズがいまも首回りに残っている。さらに捨て子であり、海の麓で発見された。彼女に関しておかしなこともあります。開始一分経つと、40のおばさんの自慰行為が映し出されます。しかも、彼女は水の中でそれを行うのです。ラストのシーンでは海の中で半魚人に抱きかかえられると、ないはずのエラがニョキニョキでてくるのです。これらの情報をもとにするとひとつの仮説が生まれます。

イライザは半魚人であった。これが本当だとすると、話せないことや自慰行為までもが海の中、そして事故だとされてたキズはもともとあったものになります。そして海の近郊で発見されたのも納得がいくのです。そんな仕掛けまで用意する本作はバケモノです。真相はいまだに謎なので、わかりませんが映画の最後に観客に謎を残すような方法は「ブレード・ランナー」のようで個人的には好きですね。

日本公開されるときは一部のシーンがカットされ、R18がR15になって公開されるようですが、ほんとに毎回日本のすることには唖然とします。この映画はもとから「大人の映画」であり、アメリカでもR指定での公開です。正直この無礼な対応に若干の怒りを覚えますが、ぜひみてほしいものです。 

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びぇ!